機械開発の素人

本日投稿する内容は私が言いたいことの基礎に当たるお話なので、物語全てが明日につながる前置きとご承知おきください。これは5月31日にとあるお方から質問を受けました内容に対する見解なのですが、返答する中身を模索するうちに、このような前置きが必要なのではないかとの結論に至りました。質問の内容にお答えするのは至極簡単なことですが、ストレートにお答えしてしまうとその人を傷つけるということは明白でした。思い悩んだ末にようやく考えがまとまりましたのでご報告させて頂きます。   
   
   

   
島屋   
島設備メーカー   
補給設備メーカー   

   
   
   
今までに何度か書いてきましたので、私の記事に古くからお付き合い頂いている方は知ってると思いますが私は機械開発のプロではありません。何をやってたかというとパチンコメーカーの一員として、設備開発の仕事を5年くらいやっておりました。従って遊技機のプログラミングのことはよく知りませんし、遊技機の規則や内規についても全く詳しくありません。パチンコメーカーというのは、日工組に加盟してその組合のルールに基づいて遊技機の開発と販売を行っているけれど、同時に島設備の開発と販売も行っているというのが常識です。そして島設備にも組合がありましてこれを補給組合と申します。愛知県にお住いの方は目にしたことがあるかも知れませんが、中川区を通過する名古屋高速の下に万場線という道路があります。この道沿いで黄金跨線橋を過ぎて下ってすぐのところに遊技機会館という建物があるんです。この1階が大都技研の営   業所で、その2階が補給組合です。昔はこの建物は一体何者なんだろう?って思っていましたが後年になってからここが補給組合ということを知りました。補給組合が何をしてるかといえば、各メーカーが特許出願した発明を精査してよそのメーカーが勝手に真似をするとそのいざこざの仲介に当たります。島設備の場合は1台当たりに200円程度のお金を支払うことで、特許技術を使用することができるってのが一般的。遊技機の世界は、機械も設備も特許で雁字搦めです。組合に加盟していない企業は、その技術を使えないようにして新規参入を防いでいるのです。

遊技機と島設備両方
(1)SANKYO
(2)平和
(3)西陣
(4)エース電研
(5)大都技研
(6)京楽産業
(7)ニューギン
(8)竹屋

遊技機のみ
(1)三洋物産
(2)ダイイチ商会
(3)豊丸
(4)高尾
(5)藤商事
(6)サミー
 
全部ではありません。ぱっと思いつくとこだけを書いてみました。エース電研は今は遊技機開発から撤退してるかもですが、細かいところはあんまり気にしないで下さい。私も今はそっちのことから離れてるのでかなり疎くなってる部分は否めません。島設備として、最初に名をあげたのは西陣と竹屋。元々玉の補給は島のウラに潜んでいる女子店員さんが、玉を手で補給していました。おーい足りなくなったよー。ハイハイ今追加しますからねで遊技が成立してたのがパチンコ。これでは如何にも原始的だということでパチンコ玉を自動補給できるようにしたのが西陣であり竹屋であります。そういう意味でこの2社は島設備の草分け的存在です。
 
そこから月日がたちまして、島屋として大きくなったのが
(1)エース電研
(2)竹屋
(3)大都技研
 
長年補給メーカーとしてはこの3社が大手でしたね。島毎に色々と呼び名もあるんです。

(1)竹屋⇒オールマイティ
(2)京楽⇒サーキット
(3)ニューギン⇒サイランド
 

最近の島設備の特徴は、足元に玉貯留タンクがないこと。アウトレールとアウトタンクを極限まで小さく、細くして遊技客が足を伸ばしても全然大丈夫というつくりになってますが、これを開発したのが細い島⇒つまりサイランドですよ。ニューギンアドバンスという会社が、島設備を開発するに当たって若い力を利用しようとした。企業と大学生が一緒になって共同開発したのがこれに当たるんですけど、このような島設備が今の時代の主流だと思います。京楽のサーキットという言葉は玉が循環する様を表している。基本この会社の設備は島と島をつないでいる交流樋を見ればすぐ分かります。ここが水平で作られているので、概観上はまことにきれいな造形物となっています。自分が島設備を作っている頃はこのような水平樋が羨ましかったのですが、水平でありながら玉を循環させるとなると何らかの電気駆動部が必要なわけですが、島屋はこのような仕組みを嫌います。パチンコの島設備において、電気的駆動部分はたったひとつしかありません。
 
それは還元機に取り付けられたプーリモータですね。
 
 
モータが回転すると取り付けられたプーリと呼ばれるゴムが、小さい車輪を回し始めてそれが大きい車輪まで伝わることで大きな力を生み出します。自転車のギヤとそれをつないだ鎖のような関係です。小さいギアから大きいギアへと力を伝えることで大きな力学的ネルギーが生まれます。自転車の場合は人の足でこぎますがモータは電気の力で回転させることにより継続的な力を生み出すわけです。開店と同時に動き始めたプーリモータは営業中は休むことなく回りっぱなし。最下部で受け入れたパチンコ玉を横一列に並べて一気に最上部まで運びます。玉が上昇するときに布と玉との間に生じる摩擦力によって、パチンコ玉はきれいに磨かれながら揚送され小箱に収納されたあと自島の補給か他島の補給に向かいます。ここから先はゆっくりと下落してきますが、自島補給に向かう玉はまずは小箱から島端まで緩斜面に下っていく樋を通りそこからサンド補給と遊技機のセーフタンクに向かいます。遊技機から発射された玉はアウト計数ボックスで玉をカウントした後アウトレールに落下します。アウトボックスの先端に取り付けられたノズルから、1個ずつジャバラを通ってポタリポタリと落ちるのです。アウトレールも緩斜面になった下り勾配が付いた樋であり島中央の還元機に向かって落下していきます。還元機に到達した玉はまた同じように、一気に島最上部まで揚送されるわけです。

つまり島の最上部まで運ばれたパチンコ玉の運命は、それ以降は全て重力によって移動してるわけです。全てはパチンコ玉が球体であるから成せることなのですが、補給設備メーカーはプーリモータ以外に電気的駆動部を持つことを極端に嫌います。だから島は短い方が都合が良いのです。考えてもみてください。島中央から島端までの設置台数が多くなればなるほど、玉を移動させる勾配が必要になる。一番低いところが還元機の吸い込み口ですが、ここから上昇勾配を付けて島端までアウトレール樋が高くなるけれど、カド番付近の遊技機からアウトボックスを経由して排出された玉はどこかでアウトレールにくっついてしまいます。そのためパチンコは10台+還元機+10台島が多いし、この台数が増えてしまうとプーリモータ以外の駆動部を用意することになります。11台以上の島設備を作ろうとすれば、途中で一旦玉を下ろして中継リフトを使います。下ろして、上昇させてまた下ろして還元機まで運ぶのです。そしてこのような電気的駆動部分を極力減らそうというのが、補給設備メーカーの使命なのですが、それは何故かというと電気制御が多くなれば島設備の故障やトラブルを招きやすいからです。
 
他島に行くパチンコ玉も同様に重力によってその運命が決まります。自島が満タンで補給レールが動かないときは、ベースタンクに戻るか、それともベースタンクとは反対の島に行くのかの選択を迫られます。ここでの運命は全て小箱内の優先順位によって玉の行き先が決まります。下の画像は還元機12台から成るパチンコの島設備ですけど、還元機1台に対して遊技機40台動かすとすると480台分の島設備です。貴方方が普段何気なく見ているパチンコの島設備ですが、その中にとりわけぶっとい島があったのを覚えておられるでしょうか?今ではパーソナル島が主流なのであまり見かけなくなったかもですが、昔は必ずといっていいほど存在していたこの駄々広い島のことを「ブタ島」といいます。そしてこのブタ島の中に何百万個ものパチンコ玉を収納するベースタンクがあるのです。パチンコ玉は1台当たり1万個程度を目処に保有するので下の画像による島設備なら250万個収納できるベースタンクを2つ持っているという感じですね。
 
 
 
島交流
 
 
例えば②の島設備で還元機により天まで昇った玉は、まずは自島への補給に向かおうとするけれど、ここが一杯ですよと言われたら次は①の島か③の島に向かおうとします。①の島が大当たりしすぎて全然玉が足りなくなれば、ベースタンク(1)は大急ぎで①の玉を補給すべく島交流を開始します。この場合も島と島をつないだ交流樋をつたって③⇒②⇒①と順繰りに玉は動いていきますので、急速に足りなくなったからといって急速に玉を補給できるわけではないのです。⑤の島のJCに大量の玉が流されました。当然⑤の島の玉量は増えすぎてしまいましたのでベースタンク(1)へ戻ろうとします。つまりベースタンクから出て行く玉と戻ってくる玉は、常に小箱内部の優先順位によってその運命が決められる仕組みになっており、①~⑥の島内のパチンコ玉が均一になるように。⑥~⑫の島内のパチンコ玉が均一になるように。場合によっては、①と⑦を島交流でつなぐこと、⑥と⑫を島交流でつなぐことで①~⑫までの全ての玉量が同じになるうようにパチンコ玉は動いていきます。

ベースタンク(1)と(2)は両方で500万個くらい
島設備①~⑫は各々2万個くらいですね。
 
各島に保有される玉量ってのは案外少なくて2万発程度。それで大当たりが連発し始めたら玉不足に陥るから常に玉は動いています。目にはさやかに見えねども、ゆっくりと時は流れて開店から閉店まで玉は小箱内部に設けられたカラクリによりまして、常に動き続けて最後には全ての島が同じ玉量になるように操られるのです。然も一旦島最上部まで昇ったた玉は、自島への補給も、他島への補給も全てが重力の仕業だけで動いていくわけですがこのような島設備のことを

オールマイティと申します。
 

私は長年オールマイティの開発に取り組んでまいりました。天井まで上昇したパチンコ玉が、勾配だけでまた同じ位置に戻ってくるという玉の循環システムは他の遊興施設ではなかなか実現しないと思うし、当時としては大都技研の島設備がカローラならば、竹屋の誇るオールマイティは島設備の最高峰⇒クラウンのような存在。今ではパーソナルシステムが当たり前なので、JCもベースタンクも島交流も全てなくなっちまいましたから補給設備はどこの商品を買っても同じようなものですが、この当時は差別化されてたわけで御座います。
 
パチンコ玉の循環システムとか、補給システムっていうのはあんまり知られていないし、何よりもパチンコの勝ち負けに全く関係ないことなのでネット上でもお見かけすることがありません。機械の開発ばかりに目が生きがちな世界ですが、実際にパチンコホールを支えているのは島設備なのでたまにはこういう記事があっても良いと思うのです。そして何よりも私は、オールマイティの開発に携わっていた頃が楽しかったですね。何故ならば、遊技機の開発は警察庁が決めた規則という枠の中でしか作れないので極めて窮屈なものつくりとなりますしつまらないのです。実際にパチンコホールの現場においても店長はじめその他ホールスタッフは遊技機に何らかの変更を行うことはできません。部品の交換も警察の許可が要りますし、場所代えも許可がいる。パチンコ台に何らかの細工を施すことは物理的に無理だし、全ては警察の許可があって成り立つものであります。だからつまらないのです。
 
それに対して設備というものは「自由」ですよ。
 

店の裁量で勝手に変更できる。今使ってるアウトボックスが駄目だと思ったら他社のそれを買えばよい。良い商品を開発すると、それがストレートに評価される。ニューギンアドバンスが作ったサイランドは画期的な島設備でした。昔は遊技客の足元にあった、アウトレールとアウトタンクが小型化されました。思いっきり足を伸ばすことができるほどになった広い空間は打っている人のストレスをなくしました。京楽が開発した島交流の水平樋は店内の美観という点で意匠の大幅UPに貢献することができました。小箱と小箱をつなぐ樋はたすき掛けのような形が当たり前だったけれど、ここが水平になるという美しい景観は見る人の心を和ませました。島設備は良い商品さえ作れば世の中から評価されるから作り甲斐があるのです。これに対して遊技機の開発は、良い商品が必ずしも評価されるとは限りませんし、そもそも個人の好みは千差万別なのでどれが良い商品なのかという定義さえもはっきりしません。爆発力のある商品は裏を返せば安定感の欠如ですから、北斗無双が良いという人ばかりとは限らない。保通協以降の機械開発の歴史を振り返っても、ヒットした商品はほんの一握りでそれが意図的に作られた機械は少ない。
 
狙って作られたヒット機種7選
(1)ギンパラと海⇒波乗りウェーブが斬新だった。海のステージはそれを継承。
(2)モンスターハウス⇒スペックと演出が斬新
(3)天才バカボン⇒ステップアップの走り
(4)必殺仕事人⇒ギミックの京楽
(5)エヴァンゲリオン⇒135停止。動け動け動いてよ!
(6)初代牙狼⇒1種2種複合機の先鞭
(7)北斗無双⇒旧MAX機を凌ぐ出玉性能
 
以上7つくらいしかないですよね。それだけパチンコの機械は狙ってヒット商品を作り出すことが難しく、それ以外で当たった商品は「たまたま」という感じ。今の北斗無双の時代が終われば、またどこかのパチンコメーカーがヒット機種を作り出すだろうとみんな思ってるけど、それがどこの会社がどのような機械をとなると誰にも分からないってのが現実だと思う。
 

パチンコ台はヒット商品を意図的に作り出すことが極めて難しい。
 
だからパチンコ台の開発よりも、島設備の開発の方が面白いのです。パチンコ島の最上部はどこの島設備でもほぼ同じ高さであります。そこから勾配を付けてパチンコ玉を島端まで行き届かせ、最後には遊技機から排出された玉を島の中央にある最下部まで誘導します。勾配を大きくとれば玉はスムーズに流れるし玉詰まりの問題は解消されますが、そうすると島に設置する遊技機は少なくなってしまいます。設置する遊技台数を増やそうとすればするほど勾配を小さく緩斜面にしなければならないので玉詰まりの問題に直面してしまいます。このバランスを設計することが島設備を作るということになりますし、これを考えると夜も眠れないほど悩みます。つまり設備開発に携わる人は物理学のプロということになります。これに対して機械開発に携わる人たちは数学のプロと言ってもいいでしょう。遊技規則と内規には、数学的内容が盛り込まれておりそれを理解することが機械開発の第一歩なのですが、この時点で落ちこぼれる人が出てしまいます。基本機械の開発に当たる人は選ばれし人であり頭のいい人が多いのですが、相当数学に自信がなければ務まらない。良い大学を出てる人でも、機械開発という組織の中では文系の人間は落ちこぼれていくというのを見てきました。そんな中でオカルトチックな発想とか、訳のわからんことを言い出すとたちまち袋叩きにあいますし組織の中からはじき出されます。機械開発の中では、同様に確からしくないなどという発想は通用しないのです。
 
設備開発に携わる人⇒物理学のプロ    
機械開発に携わる人⇒数学のプロ    
 
   
 
この話は明日に続きます。

コメント

  1. ユリア より:

    セーフレールの真っ黒にこべりつく手垢はどうやってとればいいのか…。布で綺麗になってるとは思いもできませんね。レールヒーターで玉の汚れが浮いてついてしまうのでしょうか。キャリーにすら流れず大当たり中の京楽の観音筐体で裏詰まりして流しても59秒後に確認となった時は冷や汗かきますね。
    さて今日は、やはりケイズウンガ行きましたが、はりきって用意した諭吉7人がビルバリから搬送へ流れて行きました。あれ、街の小規模店にきたのかと錯覚するほどの釘でした。言わずもがなですが、店選びが1番重要ですね。
    大敗を喫したので明日は不貞腐れ寝ます。

  2. ゴーニィ より:

    ユリア様

    まさか。中川運河に行ったの?

    いくなと申しましたのに何故?

    魚のいないところにいくら釣り糸を垂らしても魚は引っ掛かりません。

    魚の要る場所に行かないことには駄目なのですが、貴殿はまだその辺の事情をご理解されておらぬのですね。機会があれば店選びのコツを書こうとは思いますが、如何せん店舗名を公開せずにそれを書くのは難しいのでなかなか容易なお話ではありませんね。

    中川運河には、魚は一匹もおりません。

    また来週。

コメントを投稿する

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

Page Top