スーパーワンダー
京楽産業
発表時期 |
1982年
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種別 | 2種 |
玉貸機 |
現金機
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羽根開閉時間(落とし、センター) | 0.5秒、0.8秒×2回 |
カウント&最大継続回数 | なし&8回 |
賞球数 | オール13 |
オーソドックスな羽根モノで、まだカウントという概念がなかった頃のため、大当たりになったら18回の羽根開閉で玉を拾い放題! その間にV入賞すれば最大8回まで継続する。単純な効果音だが、十分な高揚感がある。役物上部の7セグはラウンド表示で、Vに入るとすぐに+1され、羽根開閉が続く。切れ目なく羽根開閉が続くのだ。
通常時、羽根が開いてすぐに玉を拾うと上段奥に転がりやすく、そうなるとV入賞は望めない。基本的には羽根が閉まりかけた際に玉を拾い、下段のVゾーン一直線か、下段に落ちてからか、下段に複数落ちて絡まり合うか、などでV入賞する。
天左(右)穴もしくは左(右)肩に入賞すると、左(右)袖にある回転チューリップが反転することで開放する。
3000個交換なのに無制限に出る!
『スーパーワンダー』は長い期間ホールに設置された。それだけ人気が高かったということだろう。単純明快なV入賞パターン、左右袖にある回転チューリップの動き(閉まっている時に2つほぼ同時に入って1回転したり、同じように閉まっている時に2つほぼ同時に入って回転しなかったり)など、印象に残っていることは多い。個人的には打った時間の長い羽根モノベスト20に入るだろう。
ただ、『スーパーワンダー』と言われてすぐに思い出すのは、無制限事件である。
当時俺が通っていたホールの羽根モノの営業方法は、3000個定量制だった。通い始めた頃は3000個の差玉が生じた時点で打ち止めになった。だから、誰かが2000個出した後に打ってすぐに大当たりになって1000個ほど出たら打ち止めになってしまう。評判が悪かったからか、その後は持ち玉で3000個になると打ち止めになるように改められた。ただ、差玉3000個の時点でいったん、店内放送がある。「355番台、確認願います」といった感じだ。
当時は打ち止めになると上皿から玉を打つ部分への玉の供給がストップするのが当たり前だった。金属片などのストッパーが出てくるのである。当然、大当たり中にそれが出てきて玉を打てなくなることが多い。これが痛い。仕方ないことではあるが、大当たりが強制パンクになるからだ。玉を打てなくなる直前は機械裏の玉の供給の音や、ストッパーの動きなどで事前感知が可能とはいえ、目の前でパンクするのを黙って見ているしかないのは苦痛だ。
放送が入り店員がやってきて「355番台、2500個追加願います」とマイクに叫んだ頃には大当たりが終わっていて…。下手すると、玉の追加後に持ち玉を飲まれることもあり、この大当たり中に玉を打てなくなる仕組みは嫌だった。
稼働期間が長くなり、『スーパーワンダー』は2軍落ちした。ゼロタイガーに次いで良い位置(正面入ってすぐの左側)に設置されていたのが、店内奥のトイレ近くに場所移動となったのだ。それでも即座に外されなかったのは、根強い人気があったからだ。
『スーパーワンダー』のシマでマークしていたのは15台の内の2~3台。同じような始動チャッカーへの入り具合でも、打ち止めまで持っていける台と、持っていけない台がある。いわゆる役物のクセなどが影響しているのだが、他に楽に打ち止めできる羽根モノがいくらでもあったから、シマを通りかかった際に軽く釘チェックをする程度だった。
挙動がおかしい『スーパーワンダー』
あれは確か『ロボQ』を打っていた時のこと。『ロボQ』のシマからは『スーパーワンダー』のシマが見えるのだが、たまに見かける常連のおっさんが、クセの良い『スーパーワンダー』を打っていて、3000個のドル箱を足元に置いているのにまだ打っていた。遠めに見ても4000個近く出ているのがわかった時点で、おっさんは(多分、首をひねりながら)3000個のドル箱を交換しに行った(当時、ジェットカウンターはシマの端にはなく、カウンターまで行く必要があった)。その後も台の前に置いてある800個ほどある中箱の玉で打ち続け、再び3000個のドル箱がいっぱいになり、再びその3000個を交換…。この間、1回もアナウンスはない。つまり、ホールのコンピューター上、この台は打ち止めになっていないのだ。
理由はわからない。こんな経験は一度もない。ただ一つ言えること、それは
「明日、あの台、朝から打つべ」。
それだけである。
すでに他のパチプロと(少なくとも表面上は親し気に)情報交換をするようになっていたし、ゴト師が来たらさりげなく店員に情報提供もする。ただそれは、俺自身の実入りを考えてのこと。金銭に対する損得しか考えていない。
恐らくホルコンの故障なのだろうが、それが直るまで俺が稼がせてもらう。今日打っていたのは常連客ではあるが、話したこともないおっさんである。暗黙の了解なんて知ったこっちゃない。忖度不要。世の中、ゼニや。
翌日。普段は開店3分前にしか行かないが、無制限の『スーパーワンダー』を打てるのである。15分前に自転車置き場に原付を止めた。こんなに早く来たのは初めてだ。
すると…。
いるのである。『スーパーワンダー』に最も近い自転車置き場から入れる裏口前に若い男が2人。張り付いて談笑している。一人は見た覚えがある。学生っぽい。もう一人は…よくわからない。
開店と同時に見覚えのある男のほうがあの『スーパーワンダー』に座った。一縷の望みは砕かれた。
敵ながらあっぱれ!
釘は変わっていなかった。
2人組の戦術は見事だった。
一人が3000個近く出したら出玉を交換し、打つのを交代。
3000個近く出したら出玉と打ち手を交換。それを繰り返すのだ。
俺は羨ましさを感じつつ夕方前に帰ったので、彼らがどのくらい出したのかはわからない。相当いい思いをしたのは間違いないだろう。
翌日。また15分前に行ってみた。前日の大漁を物語るようにまた2人組が裏口に張り付いている。
さすがに今日、あの台を奪うわけにはいかない。最低限のモラルは持ち合わせている。ただ、万が一彼らが違う台に走ったら…。
一縷の望みは砕かれた。そりゃそうだろう。
通りすがりを装って釘を見たら、いわゆる理想的な釘調整のまま。この台はクセもいいから、1時間半で(本来の)打ち止めまで持って行ける。それが実質無制限なのだから、夜まで打ち続ければとんでもない出玉になる。
この後のことは知らない。
ただ一つの事実。俺は大チャンスをモノにできなかったというだけ。
翌週にはしっかり釘をシメられていたけれど、そんなの関係ねぇ。
未だに『スーパーワンダー』を思い出す時、同時にこの顛末も蘇ってきて悔しい気持ちになる。
「無制限」の『スーパーワンダー』、打ちたかったなあ。