コスモアルファ
京楽産業
発表時期 |
1982年
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種別 | 3種 |
玉貸機 |
現金機
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デジタル確率 | - |
アタッカー開放時間 | 5.8秒×10回 |
賞球数 | オール13 |
1980年代の京楽産業を代表する権利モノ(※)といえばこの『コスモアルファ』と『アトミックⅠ』だろう。特にこの『コスモアルファ』は非常に長い期間ホールに設置された人気機種である。その要因は、権利がすぐに獲得できたりできなかったりする読みにくさ、権利獲得後の重複入賞を恐れながら打つドキドキ感、完走するかどうかのもどかしい気持ち、ストロークの工夫や止め打ちなどの小技が効くことなど多数ある。
※当時は電役タイプとして発表(当時のパチンコ台は都道府県ごとに認可されており、手動、普通電動、電役、超特電などに区分けされていた。デジパチ(1種)や羽根モノ(2種)、権利モノ(3種)という呼び方はあくまでもパチンコ雑誌などのメディアが、後にわかりやすさ重視で付けたものに過ぎない。本稿では、1990年以前(1991年以降は「第3種」=権利モノ)に発表された「図柄が揃ったり特定の入賞口に入ったりチューリップが開いたりなどしても、あくまでも「権利」を獲得できるだけで大当たりではない機種」もわかりやすさ重視で、便宜的に「権利モノ」としている。
まず目指すのは、常に時計回りで回転している6つ穴回転盤がある役物内に玉を放り込むことだ。この6つ穴回転盤には赤い穴が2つ(西日本など、地域によっては1つ)あり、それに入ればひとまず「権利獲得」となる。派手な効果音は鳴らないが、ランプが点滅(役物左右の風車と、中央の1桁7セグ下)して祝福してくれる。赤い穴入賞率はほぼ見た目通りである。
その後は、盤面最下部にある入賞口に玉が入るたびにその左右にある電チューが開放して出玉を稼ぐ。記憶はない。釘調整やストロークによっても異なるが、電チュー開放時は5個~9個くらいは玉を拾う。最大継続回数は10回だ。ただし、権利獲得中に再び赤い穴に入ると、その時点でパンクとなる。
たった1回、ただ1台
『コスモアルファ』がホールでバリバリ活躍していた頃、主流だったホールの営業方法は定量制だ。3000個だったり4000個だったり、ホールが決めた定量個数になったら打ち止めになるわけだ。換金率は2円から4円と幅があった。
俺が平日に通っていたホールの営業方法は3000個定量で、換金率は都内屈指の安さ。ただ、それをカバーする長所があったから毎日のように顔を出してパチプロを気取っていたわけだ。
『コスモアルファ』(赤穴2つバージョン)は何回か設置シマを変えながらも3年以上にわたって稼働し続けた。
パチプロとして最大限の利益を上げるためには普通機の優秀機を打つのが一番で、それが難しければ役の甘い羽根モノとなる。次が役の辛い羽根モノで、権利モノは最下位。最初のまとまった出玉を得るまでに金を使う金額が少なければ少ないほどいいからだ。権利モノは、開放台でもらってもあまり嬉しくないタイプであり、積極的には打っていなかった。
しかし、設置期間が長かったゆえに『コスモアルファ』は打つ機会が多く、たくさんの想い出がある。2つに絞って書いていこう。
パンクなしの連続で打ち止め!
『コスモアルファ』の出玉は定まっていない。権利を獲得してもすぐにパンクすることだってある。個人的には、赤穴に入ってすぐに赤穴に入って…赤穴が2つ埋まってる! ということがあった。当然、一瞬、ランプが点滅した直後に消えた…。空しい。悲しい。
これは極端な例だけれど、最大継続回数の10回に到達するのはそこそこ難しい。権利獲得を目指す際はぶっ込み周辺を狙って打つけれど、その後はパンクを避けたいから盤面右側に打ったり弱めに打ったり。ただ、電チューを開放させる入賞口になかなか入らないと持ち玉は減っていく。そこでぶっ込み狙いにストロークを変えてパンク…。
そんな権利獲得とパンクを繰り返す機種ではあるけれど、たった1回だけ奇跡のような経験をしたことがある。それは
権利獲得→完走、権利獲得→完走、権利獲得→完走、権利獲得→完走を繰り返してあっという間に打ち止めになったのだ。完走することさえ望外の喜びなのにそれが連続するとは。稼働して2年以上経っていたから、打ち止めの実績や台のクセもほとんどわかっていたとはいえ、これには本当にびっくりしたものだ。
300台以上設置されているホールでただ1台
俺が通っていたホールは、新装開店前になると極端に釘をシメ始める。当時は年に数回、大きな新装開店がイベント的に行われていて、そこで出すからその前には釘をシメますよ、ということだったのだろう。
これは毎日のように通っている俺からすれば、釘のシメ具合から「そろそろ新装開店か」とわかる。
ところが、そのシメ具合が尋常じゃない時があった。普通機も羽根モノも権利モノもシメシメ。デジパチのコーナーはサラッとしか見ていないが、客付きの悪さが異常。本気で潰れるんじゃないかと心配するくらいのシメモードと客付きの悪さ。
そんな中、唯一打ち止めにできそうな台が、前日に俺が打ち止めにした『コスモアルファ』だった。客付きが悪く、1台打ち止めにしても2台目が望めない中で、その一台に固執するのもどうかと思うが、変な意地やプライドがあったのだろう。何とか打ち止めにはしたけれど、他の台の釘を見ても打てる台は皆無で、そのまま換金所に向かうしかなかった。
翌日もバカみたいに朝一からホールに入ったけれど、ほぼ全てのシマを見てそのまま外に出た。滞在時間は数分だった。
結局、それから数ヶ月間、このホールは休業することになる。外装も変える大規模な改装に入ったのである。
赤穴は1つか2つか
10誌以上のパチンコ雑誌で編集に携わってきた。その中で最初のほうの編集部での出来事である。
まだ昭和時代だったから(?)スタッフは個性派揃いで、今振り返ると無茶苦茶なことばかり。
「ウチは朝10時からだから」と編集長に言われたけれど、編集スタッフが集まり始めるのは11時頃から。それが常態化していた。
悪友と話すようなぞんざいな口調で大きな声を出して電話をしている編集スタッフがいたので驚いた。ある日、電話が来たので新人だからすぐに出ると「T君、おるぅ~?」と、そのスタッフ指名の電話がきた。名乗らない。取り次ぐとその人は某メーカー社員で、お互いに非常識だった。
そんな新人時代、西日本でパチプロをやっていたというO氏と初めて話をした時のこと。彼はパチプロだったことに誇りを持っていて、パチプロたるもの、一人暮らしであること、生活費は全てパチンコで稼ぐこと、攻略法を持っている(知っている)こと、それを活用できることが最低条件らしかった。見た目は私同様怖いけれど、敬語で話してくる。
彼は主にデジパチの攻略をしていて、私はジグマとして羽根モノメインで打っていたのだが、パチンコで稼いできた共通の過去があるから話は合った。
『コスモアルファ』についての話になった。
「『コスモアルファ』は止め打ちで攻略できますよね」とO氏。
「止め打ち、ですか?」と私。
「権利穴に入りにくいタイミングでは玉を打たない、だけですけどね」。
ピューッと飛ぶか、ダラッと落ちるか
ちょっとだけ話を盛ろうかと思った。
『コスモアルファ』での止め打ちは正直考えたことはなかった。というのも、回転盤の動きは確かに遅いけれど、役物に玉が飛び込む時は、釘の間を抜けた玉が元気な20代の青年のようにピューッと飛ぶように落ちる場合と、老人のようにダラッと落ちる場合がある。後者が多いならそのタイミングに合わせての止め打ちは可能だけれど、前者のパターンがあるから止め打ちの効果には懐疑的だったのだ。
ただ「止め打ち、ですか?」と私が言った時の彼の僅かな失望感を帯びた目を見逃さなかったので、盛ろうかと思ったのだ。
私は言った。
「いや、止め打ちはあまり考えたことはないです。2/6を狙うのは難しくないですか?」。
「2/6? いや1つですよ」。
「えっ、2つです、赤穴は」。
彼は赤穴1つの『コスモアルファ』を頭に描いて話をし、私は赤穴2つの『コスモアルファ』を念頭に話をしていたのである。この時、初めて『コスモアルファ』には少なくとも2種類あることを知った。
結論として、
彼は「赤穴2つなら止め打ちしないかも」。
私は「赤穴1つなら止め打ちするかも」。