低空飛行の始まり

今年の大谷選手は打点が異常に少ない。去年の前半からくすぶっていたチャンスに打てない。得点圏打率の低さを指摘するアンチが多いんですけど、そもそも1番バッターを打ってる時点で打点が少なくなるのは当たり前であり、メジャー150年の歴史を紐解いても1番バッターで打点王になった選手はひとりもいません。パワーとスピードを兼ね備えた打者を1番に起用するようになったのは割と最近のことですし、つい最近まではフルタイムの1番打者で100打点を挙げた人は殆どいませんでした。過去を調べると最初に100打点を記録したのはカリフォルニア・エンゼルスのダリン・アースタッドという選手らしいのですが私はそんなこと知りませんでした。


そこからしばらくたってブラックモンが104打点を記録した時に1番打者としての記録を塗り替えたって記事があったので、そういうことなのかと思った次第。ホームランバッターを1番に置いたはしりみたいなのがチャーリー・ブラックモンでありますが、この選手も私は去年までは知りませんでした。大谷選手がナ・リーグに移籍してから対戦相手となって、良いバッティングしてるなあって思ってたら今年限りで引退するってことをBS-1で紹介してました。丁度フライボール革命が起きた頃から、次第次第に1番という位置付けが変わってきて、長打力のある打者は1打席でも多く打席に立たせて得点力UPを狙うという考えになっています。その典型的な例がシュワーバーでしょうけど、打率1割台で1番を打って104打点を稼ぎました。シュワーバーは極めて例外的な1番ですけど、それ以外のブラックモン、リンドア、アクーニャはいずれも長打力と俊足を兼ね備えた選手。
 

こういうのを見てると今年の大谷選手が打点王になる可能性は限りなく低いと思うけど、精々100打点に届くかどうか?今年の4月に大谷選手の予想でホームランは60本打つと書きましたけど、その時に打率と打点は分からんけどっていうのを付け加えていました。シーズン当初は彼が何番に居続けるのか分からなかったし、打順が変われば打率も打点も変わると思ったからの事なんですけど、ホームランは打順が変わっても其れほど大差ないと思うけど、打点は大幅に変わりますよ。


基本的に1番を打ってる時に比べて3番を打つと
ホームランはほんの少し減る可能性があります。
打率は多分上がります。
打点はかなり増えます。


こういうのはチームとしての考え。大谷選手が何番を打つと1番チームの得点能力が高くなるのか?大谷選手が帰すのではなくて、大谷選手を帰すというのがドジャースの方針。其れだけ後を打つベッツ、フリーマン、Tヘルナンデスへの信頼が厚いってことなんでしょうけど後ろにこの3人がいなければ彼が1番を打つこともなかったでしょうね。先日のCLE戦をスポナビで観戦してる時、2回の表ツーアウト3塁でも、大谷選手は申告敬遠をされてしまいました。ノーアウト2,3塁。ワンアウト2,3塁。ルーアウト2,3塁。ツーアウト2塁、ツーアウト3塁だとほぼ歩かされてしまいます。これでは打点を稼げません。満塁の時以外は悉く勝負を避けられてしまうので本当に今年大谷選手が打点を荒稼ぎする機会は少ないと思うけど、こういうのは王貞治、松井秀喜もおんなじでしたよ。

 

長嶋の引退直前、若しくは引退後は王は悉く歩かされてしまいました。


1973年、1974年が其れに当たるんですけど、こういう時HRバッターの打率は極端に上がります。王が、バースが、落合が三冠王獲った時はこんな感じ。スコアリングポジションに走者がいると、相手チームは王が打てないような左投手に替えるか、敬遠するか、もしくはピッチャーインザホールにしてしまう。ボール球から始まって打ってくれたら儲けものみたいな投げ方になるけど、そうするとノースリー、ワンスリーになってピッチャーが追い込まれる。ストライクを取りに行くと王に痛打されるってことで王の打率が急激に上がった訳。だから1973年、1974年は王が三冠王になったんですけど、今の大谷選手も其れに近い。


松井が全盛期の頃はセ・リーグのピッチャーは皆松井を怖がって勝負にいけなかった。


巨人ファン、松井ファン以外は分からんかも知れんですけどね。王の打席を8年間、松井の打席を10年間見続けた身としては今の大谷選手が打点を稼げないのはよく分かる。NYYにいた時の松井はクラッチヒッターと言われてたけど、巨人にいた頃の松井はチャンスでは全然打てないバッターだった。打てないんじゃなくて打たせて貰えないんですけど、当時はスコアリングポジションに走者がいると殆ど勝負してこなかったんで松井に打点が付かなかった。今の大谷選手よりももっと顕著に投手は松井を歩かせた。よほど松井が恐かったのかチャンスで松井を迎えると


(1)敬遠か
(2)ピッチャーインザホールか
(3)遠山を出すだけ


左の遠山は変則的な投げ方をしてたんで左打者が攻略するのは至難の業。こういうのはかつての掛布がいた頃も、巨人は角を登板させると悉く掛布を打ち取っていたので時代が変わっても左打者が打てそうにない左投手ってのは必ず存在する。今のメジャーなら左のクロシェット、セール、スクーバル、ピーターソン、ボイド。ティム・ヒル、ティム・ヘリン辺りですかね。この辺のピッチャーが出てきたときは大谷選手は殆ど打ててないと思うんですけど、そういう左キラーを出して打ち取りに来るか歩かすかの二択。
 

 

2001年の巨人は1,2番に仁志、清水がいて3番に高橋由伸がいたんでチャンスで松井に打席が回ってくることが多かったけれど、この年1番打点を稼いだのは清原。チャンスで打席が回ってきても松井は歩かされるから、その後の清原とか元木がヒーローになる訳。清原って西武時代には1度も100打点稼いだことはないんですけど、その頃は清原が歩いてデストラーデが帰す打線。だからデストラーデが打点王になるんですけど、一般的にチームで最も恐れられるバッターには打点が付かないように相手チームは仕掛けてきます。だから西武の黄金時代には清原の後が打点を稼ぎやすいし、2001年の巨人では松井の後が1番打点を稼ぎやすい。この年の清原は121打点も獲得し、打点王になりそうでしたけど実際に打点王になったのはヤクルトのペタジーニでした。


ホームランと打点王がペタジーニで
首位打者が松井でしたね。


元々松井はそんなに高打率をマークするようなタイプじゃなかったけど、ピッチャーがあまりにも松井を怖がって常にピッチャーインザホールになるから松井の打率は急騰した。1973年、74年の王も同様に常にピッチャーインザホールになるから王の打率は急騰し2年連続三冠王に輝いた。このように日本時代の松井はチャンスでは全く打てないバッターだったけど、向こうに行くとAロッドという化け物みたいな人が4番を打っていて、Aロッドが恐くて歩かすから松井は打点を稼ぐことになり、松井はクラッチヒッターと呼ばれるようになりました。因果なものです。巨人時代にはチャンスで打てないバッターが、メジャーでは勝負強いバッターと言われる。


そういうものなんですよ。

だから勝負強いとか勝負弱いとか意味ないんですよって

 

今の大谷は巨人時代の松井と同じような環境に置かれてるんで、打点は稼げないでしょうね。これは本人が勝負強いとか勝負弱いとかには関係なく、打点を稼げるか否かはチーム事情と打順により大きく変わってくる。ただし


ただしですよ。


王とか松井は相手チームから怖がられると、常にピッチャーインザホール環境となるから打率が急騰したけれど、大谷は其れにはあまり当てはまらないと思うんですよね。王と松井は打者としてのタイプが似ている。甘いボールが来るまでじっと待つ作戦。基本的にはホームランにできるボールが来るまでは、例えストライクゾーンに球が来ても手を出さない。だからストライクゾーンからボールゾーンに逃げてくような外の変化球とか、内角低めの変化球は振らなかった。ノーツー、ノースリーになっても際どいボールには手を出さず、確実にホームランできる球が来るまで我慢した。だけど大谷は違うんですよ。彼はストライクゾーンに来たって思ったらフルスイングするんでバットが止まらない。真ん中高めのボール球をブンブン丸。インコース低めのチャンジアップをブンブン丸するから三振が増えるけど、其れが故に彼はあまり高打率は残せないかと思ってる訳。

 

Pitcher in the hole⇒穴に落ちる手前の事。カウントが悪くなり0-3,1-3と追い込まれること。ここでカウントを取りに行くと甘くなって痛打されるので、投手はボール先行となると打者を打ち取り難い。Batter in the holeはその逆。

 

ボクは未だに大谷の打撃技術は、王や松井にはかなわないと思っててまだまだ伸び代があると思ってる訳。打撃技術は王>松井>大谷の順だと思うけど、反面パワーは段違いで大谷が上なので、王や松井がホームランにできない球をこれまでスタンドまで放り込んで来た訳。其れが故に今年の彼は本塁打を60打つと予想してるけど、打点王と首位打者はかなり難しい。何も今年三冠王を獲らなくても来年以降に打順が変わるかもしれんから、3番を打つようになってから打点と打率を意識するのが良いのかな?今はただ今のままの大谷選手でいて欲しいから、今年は打点と首位打者は諦めることにするよ。
 

 

当面の敵との戦いが心配になってきました。


5/24から始まった26戦はいずれもピッチャーの良いチームとの対戦が組まれています。この26戦を終えると凡そ半分が消化したことになり、個人としてもチームとしてもその先が見えてくるでしょうね。この26戦でホームランを10本打てなかったら苦しいって思ってますけど雲行きは怪しいです。先日もダイヤモンドバックスのデービッド・ピーターソン投手(左)に3三振食らいましたし、打撃の調子は決してよくありません。

 

この先メッツとの4連戦があるんで、もう1回ピーターソンと対戦せねばならんし、ヤンキースとの3連戦では大谷選手全く打てる気がしないマックス・フリードの登板があるのか?ないのか?中継ぎのティム・ヒルも打てる気がしないしニューヨークの2チームとの対戦はまさに鬼門。その後に続く、SDとの7戦とSFとの3戦も同地区対決、優勝争い対決だから向こうは大谷全力で抑えに来るはず苦しいぞ。この26戦が今年の肝だと思うけど、既に戦った6戦で大谷選手は


22打数4安打と全く打てていません。


大丈夫か?って思うけど大丈夫なわけない。あーあマックス・フリード、デービッド・ピーターソンとの対決で嫌な気持ちにさせられそうだけど、ここはひとつ1球で仕留めるしかない。メッツとの対戦では今度こそエドウィン・デイアスとの対戦が組まれそうだけど、ここも1球で仕留めるしか手がなさそうだ。1球で仕留める精度の高さは「王貞治」にかなう打者はおらん。大谷ファンにとってこの先の20戦は祈るような気持ちで…


ヤバイよ。ヤバイよ。大スランプの始まりだあー。

 

7月には投手大谷が観れそうな感じになってきました。1番をずっと打ってるし、相変わらずLADの下位打線はクソなんで大谷選手が打点を荒稼ぎできるシーンは殆ど観れそうもない。だから打点王は譲るけど、今年の打撃はホームランを60本打ってくれたらそれで良いかな?あとは7月、8月、9月にローテーションに入って投げられればそれで良いです。最近打者を相手に大谷さんが投げるようになりましたが、これを見てる限りウォーカー・ビューラーとは違うような気がする。以前の大谷投手とは違っても良いから、ローテを守れるくらいのピッチングができることを願ってる。最終目標はミスターオクトーバー、ミスターノーベンバーになることだから11月にピークが来るような調整で良いと思いますけど、来年以降も彼が投げるのは7月からでいいのかもしれない。

 

LADはLAAのような無茶な起用はしないはず。

あと8年は球界の宝なのだから。

契約はあと8年半。怪我しないようにやることがLADの究極の目標でしょうし。

コメント

  1. Twitterの大谷好きより:

    これから大谷も熱くなってくる6月が来ます。すごい楽しみですね😊

    2025年5月31日 AM 10:09
  2. ゴーニィ より:

    言ってる間に大谷さん2本打ちました。

    流石です。

    難攻不落のマックス・フリードでどうなるかと思いましたけど、振りかえると去年もこの投手からバックスクリーンにホームラン打ってるんですよねえ。素晴らしい1日でした。ありがとう。

    2025年5月31日 PM 4:45

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