アリゾナの夜
5/10の土曜日。日本時間ではお昼時を過ぎた頃でしたが大谷選手に劇的な勝ち越し3ラン本塁打が飛び出しました。歓喜する日本列島。その日は1日中、大谷大谷大谷で大騒ぎでしたけど私はその試合の途中から。明らかにいつもとは違う佐々木投手のデキを観ててこれはやばいなと思った矢先グリエルの満塁ホームランが飛び出して没。負け試合だわ。
アリゾナでの4連戦
3-5負け
14-11勝ち
0-3負け
8-1勝ち
これを見て何か思うところはないですか?始まる前から私は4連敗する可能性もあると思っていただけに2勝2敗で終れたことにホッとしてますが第1戦、第2戦が山本、佐々木なのですが戦う前から不安定だろうと予測してましたし、第3戦、第4戦は相手はコービン・バーンズ、ザック・ゲーレンという事でAZのエース格が登場。つまり1,2戦を落とすと4連敗も有り得る訳ですから初戦の敗退とこの日の満塁ホームランで8-8になった時点ではお先真っ暗。
4連敗だな。
アリゾナは周りには砂漠地帯が広がっていて、ガラガラヘビが生息するからダイヤモンドバックスと名付けられてる訳。夏場は40度を越えるから球場の屋根を閉じ温度を管理します。基本アリゾナとかアーリントンの夏は異常なほど暑いので、この地域の野球場は大抵がドーム球場。ドームでエアコン付けないと試合ができんというほど暑いから
チェイス・フィールド
グローブライフ・フィールド
ダスキン・パーク(ミニッツ・メイド・パーク)
テキサス、アリゾナではいずれも開閉式のドーム球場。チェイス・フィールドは夏場は常に猛暑なので屋根を閉じて、気温と湿度を管理して試合を行いますが、4,5,6月は偶に屋根を開けて試合をすることもあるんですけど、其れが上記の4連戦で
佐々木が投げた試合です。
アメリカの南西部には4つほど大きな砂漠がありますが、この中で野球の試合に影響を及ぼすと思われるのはアリゾナ、メキシコに
あるソノラ砂漠ですかね。
(1)グレイト・ベイシン砂漠
(2)モハベ砂漠
(3)ソノラ砂漠
(4)チワワ砂漠
ロサンゼルスの東部にも大きな砂漠はあるのですが、基本ロス、サンディエゴ、サンフランシスコは海の近くにあるので乾燥はそれほど酷くない。ドジャースタジアム、日中は湿度が低くてボールがよく飛ぶけど夜になると湿度が下がるので其れほどヒッターズパークではありません。今年も大谷選手が5-3,1本塁打を打った試合で凡退した2打席はあわやホームランかという大飛球でしたがその日の夜の湿度は80%でした。水分抵抗があったためホームランになり損ねたという話だったけど其れはやっぱり海の近くという事があるのかもしれません。兎角海の近くでは空気中に水分を含むと思うのでロスやサンディエゴでは「湿度」は其れほど厄介ではないようです。私がサンフランシスコに旅行した時も、かなり湿度は高いと感じました。然しながら其れよりも緯度が高いラスベガスに行ったときは空気の乾燥は酷くて6月だというのにクソ暑かった。ベガスがあるところはモハベ砂漠が近くにあるから、アスレチックスがベガスに移転した時は「空気の乾燥」が問題になるでしょう。
ベガスとフェニックスは砂漠の中って感じですよね。
アリゾナは5月のこの時期でも気温が35度くらいなので、この4連戦でも屋根を解放したのは第2戦だけ。その第2戦に登板した佐々木投手とか相手のE.ロドリゲス投手にとっては地獄だったと思います。この試合の湿度は何と14%。空気が乾燥してピッチャーは思ったところに投げ込めない。ボールが滑って抜け球が目立つ。事実この試合の佐々木投手も左打者の外に投げたスプリットが抜けて大きく右にそれるというのが多かったです。ただでさえメジャー1年目でMLB球の滑るボールに苦労しているのに、屋根を解放したチェイス・フィールドの環境はすこぶる厳しかったと思います。ボールが滑るとしっかりグリップできないから真っ直ぐの球速も出ないし、変化球も思ったところにコマンドできない。この試合で佐々木は並の投手という記事を沢山読みましたけれど、乾いた環境で投げていたという点に触れた記事がなかったのは残念です。この試合の投球は参考になりません。湿度が高ければ彼は好投するはず。更に言えば、湿度が14%も低いと捉えた打球は殊の外よく飛びます。2塁打、3塁打、ホームランがよく出ます。
だから屋根を開けた時のチェイス・フィールドでは乱打戦が多いのです。
(1)屋根を閉じた時のチェイス・フィールドはピッチャーズ・フィールド
(2)屋根を開けた時のチェイス・フィールドはバッターズ・フィールド
2つの顔を持つ球場。基本的には球場が広いんで普段は投手有利の球場なんですが、屋根を解放すると湿度が極端に低くなるので一転して投手有利⇒打者有利の球場に変わる。ピッチャーは思うところに投げ込めないので四死球は増えるし、捉えられた打球はよく飛ぶよく伸びる。乱打戦の始まりです。この試合も初回から大谷選手の打球はセンターの深いところで普通の球場なら本塁打。130メートルの2塁打となりましたが3回までにドジャース打線が火を噴いて8-3とリード。ここからダイヤモンドバックスが反撃に出て8-4と迫り、5回の裏に満塁ホームラン。8-8の同点となった時点でダイヤモンドバックスが優勢に立ち、8-9,8-10,8-11と加点され勝負あり。
普通はここで終わるんですが、ダイヤモンドバックスの後ろは不安定なので登板した投手から4連打で同点に追いつきました。こうなると押せ押せですけど、アウトお墨付きのアウトマンが甘い球に空を切って空振り三振。やはりアウトマン、コンフォルトで2アウト必然だからもうダメかと思いきや、手が滑ってコンフォートにデッドボール。この死球が大きかったですね。2アウト2塁で大谷だと歩かすか、歩かせないまでもボール気味の球しか投げないんで打ち取られる可能性大。1アウト1,2塁だと歩かせれば満塁でベッツだから勝負するしか手がないんでホームランを打たれたってこと。これが日本中の話題を独り占めした一撃となりましたが、こういうのは割と
ありがちなことです。
佐々木投手がいつもにもまして制球定まらず、真っ直ぐ走らずも。大谷選手の最後の3ランもチェイス・フィールドの屋根が開かれていた事と無関係ではありません。こう考えると野球って本当に面白いですよねえ。
温度
湿度
風
芝生(天然・人口)
屋根付き・屋根なし
外野の形状
外野フェンスの高さ
日本中が沸きに沸いた大谷選手の起死回生のホームランも、佐々木投手の不甲斐無いピッチングもチェイス・フィールドの「湿度」によってもたらされたもの。そのために大谷選手を神のように時別扱いすることもなければ、佐々木投手を「並のピッチャー」と酷評することもない。試合開始の前に当球場の屋根が解放されたことで、当日の乱打戦が予想されたし、最後に大谷選手に3ランホームランが出たことも想定の範囲内と思う。
メッツ千賀投手(ニューヨーク)
カブス今永投手(シカゴ)
オリオールズ菅野投手(ボルチモア)
アメリカ大陸の東側はよく雨が降るし湿度が高い。湿度が高い環境で投げられてる日本人投手は軒並み成績が良いです。MLBの使用球は日本の其れと比べて摩擦係数が低くてよく滑ると言われます。そうした中で佐々木投手はボールの違いに苦しみながら、今年1年間はメジャー球に慣れるまで試行錯誤を続けるでしょう。其れを非難するかしないか?
野球は
湿度が高いと投手に有利である。
湿度が低いと打者に有利である。
14対11で勝利した翌日はドジャースはダイヤモンドバックスのコービン・バーンズ投手に抑え込まれて0-3で負けました。確かにバーンズは経験も有るし、CYヤング賞を受賞したこともある名投手です。然しながら佐々木が投げた翌日、この球場の屋根は閉まっていました。もしバーンズが第2戦に先発していれば違う結果になったと思う。
そういう事を考えながら野球を観戦すると、もっと野球が楽しくなりますね。パチンコビレッジでは、他の野球記者が書くような凡人発想の記事は投稿いたしません。物理的・化学的な根拠に基づいて野球を解説していく。そういう見方をしていくと野球がもっと面白くなるはず。チェイス・フィールドにはピッチャーズ・フィールドとバッターズ・フィールドの2つの顔があります。この4連戦の第2戦はバッターズ・フィールドだったけど、第3戦はピッチャーズ・フィールドだったってことですよ。
アリゾナの夜は熱い。
然しながら観客が引き上げると、さっきまでの熱戦が嘘のようにアリゾナの夜には涼しい風が吹いていた。